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電脳奇人Zuuboがもうなんだかわからない現実とか妄想とかを邪念まみれで書き散らすカオスなブログ
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 「海賊島事件」
 著者・上遠野浩平

例によって「戦地調停師シリーズ」の第三作
「例によって」なんていうほどの数の感想アップしてないけど…

古城を利用してつくられたサロン「落日宮」
その特殊な立地条件から世界中の要人高官が集まり、さながら国際社会の裏情報市場と化していた落日宮で亡命し逗留していた絶世の美女「夜壬琥姫(ヤミコヒメ)」が殺害された…
それも全身を水晶に封じ込められるようにして…
容疑をかけられたのは同じく落日宮に逗留していた独自の結晶魔術を使う稀代の芸術家にしてプレイボーイ「サハレーン・スキラスタス」
容疑をかけられた彼が逃げ出した先は全てのものを受け入れるとしてはばからない船上の歓楽街「ソキマ・ジェスタルス」
海賊組織を母体に持ち、実質的治外法権を持つこの地にどの国家も手出しが出来ないこの場所を軍事大国「ダイキ帝国」の大艦隊が包囲した。
要求は「スキラスタスの身柄の譲渡」。
聞き入れない場合は武力行使も辞さない構えのダイキ帝国軍に対しソキマ・ジェスタルス(以下、海賊島)側は第三者による事態への介入を提案。
事態を打開すべく海賊島が指名したのは「殺竜事件」の捜査に於いて海賊島幹部と頭領「インガ・ムガンドゥ3世」の注目を集めた遠国カッタータの特務仕官

「レーゼ・リスカッセ」特務大尉

その補佐役として事態に当たることになった稀代の戦士、「風の騎士」こと

「ヒースロゥ・クリストフ」少佐

同じく補佐に当たる世界的通商連合「七海連合」の特殊戦略軍師「戦地調停師」

「エドワード・シーズワークス・マークウィッスル」
通商「ED(エド)」

たかが亡命貴族の殺害事件に大軍を動かしたダイキ帝国の目的は?
夜壬琥姫を殺害したのは本当にスキラスタスなのか?
スキラスタスをかくまうムガンドゥ3世の真意は?
海賊島の命運は?
再び集まった殺竜事件のトリオは果たして事態を鎮めることが出来るのか!?

と、まあかいつまんでまとめるとこんな感じですかね。
かなり端折ってますが、本作は過去の出来事や色々な場所で起きていることを同時に描いていってるので、詳しく話し出すときりがないです。

と、まるで面倒くさそうに書いてみたものの、ボクはこのシリーズの中では本作が一番好きだったりします。
あんまり細かく説明するとネタバラしになってしまうので書きませんが、本作には「可哀相な善人」が登場しないので変に感情移入せずに読めて面白かったです。
まあ強いて言うなら厄介事を押し付けられたレーゼ大尉は可哀相と言えなくもありませんけど、キャラクター的に悲壮な感じにはならないので。

あと個人的には本作がシリーズで一番ミステリっぽさがないです。
というか多分はじめっからそう言うところを目指してないんだと思いますが。
相変わらず人間の悪い部分は描かれていますが、一大歓楽街と高級サロンという舞台のせいか陰惨だったり、湿っぽかったりはせず、全体的にカラっとスッキリとしていた印象です。
殺竜事件での海賊島訪問が伏線になっているの面白かったですし、三代にわたるムガンドゥの歴史と三代目ムガンドゥの物語でもあり、「父と子」の物語でもあったりします。

登場するキャラクターもくせのある人物が多く、自分的にはすごく楽しめましたとさ。


 

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 「紫骸城事件」
 著者・上遠野浩平

先日の日記で取り上げた「殺竜事件」の続編。
と言っても物語的に直接つながっているわけではなく、同じ世界でおきたまた別の事件の物語。

現代現実世界と平行して存在する別の世界。
科学の変わりに魔法が発達した世界で三百年前に世界を席巻した最強最悪の魔女「ビイアス・リ・カーズ」。
そのリ・カーズの建てた巨大な城塞「紫骸城」
魔女の呪いがいまだ残ると言われるその城は現代に於いて、魔法技術の最高峰を競う「限界魔導決定会」の会場となっていた。
魔導師ギルドと呼ばれる管理組合の主催で行われるその大会に母国のギルドにおける発言権拡大のため審査員として参加していた

「フロス・フローレイド」魔導大佐

は紫骸城に到着した直後に、前大会の優勝者ニーガス・アンガーの殺害事件に遭遇する。
だがそれは、さらに続く地獄のような大量死事件の幕開けでしかなかった。
フロスは人間の身の回りの世話をするロボット

擬人器「U2R」

と事件の解決に乗り出す。
収まらない被害。
あるいはそれは本当に魔女の呪いなのか?
同じく審査員として招かれていた七海連合の悪名高い双子の戦地調停師「ミラル・キラル」はどう動くのか?
果たしてフロスは事件を解決に導くことが出来るのか?

って感じのお話です。
前回も思いましたがあらすじまとめるのってすごいむつかしいですね。

まあ、それはおいといて。
本作は前作以上に人間の醜い部分が描かれています。
前作が世界を旅して回る話なら、本作は(広いとはいえ)城の中のみを舞台としたお話。
大会開催期間が終るまで城の外には出られないという極限状況の中だからこその人間の黒さが出ています。
前作の感想で、「魔法という現実とは違う物理法則」故に推理モノとして読み解くのはむつかしいみたいなことを書いたのですが、今回はやはり魔法が決め手でこそあるものの、大本のトリックというか、手口に思い至るまでの材料がかなりあちこちに伏線として提示されているので、勘の良い方は事件の仕組みに気づくかも知れないです。

で、本作にもまた七海連合の戦地調停師が出てきます。
弟キラストルと姉ミラロフィーダの双子の戦地調停師は「一つの紛争を終らせるためにそれまでの二倍の犠牲者を出させる」と呼ばれるほどエグい方法で調停をこなす人たちらしいので、本作の事件においてもその性格の悪さを存分に発揮してくれますが、悪名を憚らないミラル・キラルよりも、権力争いに溺れる人たちの方が醜く浅ましく映るのは後から思い返すとなかなか皮肉だなとか思ったり。

ちなみに今回も金子一馬氏のイラストがかっこいいです。
なんというか、断片的なイラストで(実像は個人で違うとはいえ)作品内世界の有様を用意に想像させられます。

 
 「殺竜事件」
 著者・上遠野浩平

現代の現実世界とは並行して存在する別世界。
科学の代わりに魔法と呼ばれる技術が発達した世界を舞台にした半ミステリー半ロードムービー的な構成の物語。

「竜」という全てを超越した知的生物が住み着いていることを後ろ盾として独立自治を確立していた「ロミアザルス」という集落、だがその無敵の「竜」は何者かに殺されてしまう。

争いを嫌うという竜の威光を利用して紛争の調停を目論んでいた世界に並ならぬ影響を持つ通商連合「七海連合」
その依頼で立会人を務めるはずだった女性仕官
「レーゼ・リスカッセ」特務大尉
謀略と弁舌で歴史の流れさえ歪めると言われる、世界にたった23人しか存在しない七海連合の戦地調停師、「エドワード・シーズワークス・マークウィッスル」
通称「ED(エド)」
類稀な武勇で、「風の騎士」の異名を持つ七海連合の派遣士官
「ヒースロゥ・クリストフ」少佐
の三人は竜殺害の謎を解き明かすため一年以内に竜に面会した「容疑者」達と会うために世界中を旅して回ることに。
期限は一ヶ月。
果たして「不死身」のはずの竜は、誰に(whodunit),なぜ(whydunit),いかにして(howdunit)「刺殺」されたのか?

というのがまああらすじ。
上遠野氏の小説は代表作の「ブギーポップ」シリーズの最初の方しか読んだことがないけど、ファンタジーチックな設定を用いながらも、人間の暗い部分を描くのに長けた人という印象で、この殺竜事件も魔法が使えるというファンタジックな世界においても人間は現実と変わらず醜く浅ましい争いを続けている。
これは他の人の感想を聞いて「なるほど」と思ったことだが、殺竜事件と銘打っているものの、竜が殺されたことよりも、その謎を解くために世界を旅する三人が遭遇する事件や人物の描写がメインとなっている。
特に今後シリーズを続けていく上での世界観説明みたいなものも含めており、本作に登場したキャラクター達は今後もその名前や本人が登場する。

一応分類としてはミステリになるのだが、その根幹をなす物理法則自体が現実とは違うものなので、いわゆる「推理モノ」というのとはやや毛色が異なると思う。
当然読んでるこっちは魔法と言う技術でどこまでのことが可能で不可能なのがまるでわからないので、一緒になって考えるというよりはただひたすら客観的に内容を追って行った方が楽しめるのではないかと思う。

結末としては現実とはちがう魔法という法則や竜の不死身の力などの概念で、やや煙にまかれてしまったような印象も残ったが、全体として楽しめたと思う。
人の有り様こそ現実的とはいえやはり魔法という概念はファンタジックであり、そういう設定に心惹かれるものもあった。

またイラストレーターの金子一馬氏のイラストもその世界観をよく盛り上げていると思う。
特に「竜」のデザインは既存のドラゴンの大きいトカゲというイメージを壊すものであり、なかなか前衛的で格好良かった。

といってもそもそもボクはこの人のイラストが好きでこの小説を買った口なのでこれはあまり客観的な意見とは言えないが。



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